・・・ 二 エレベーター 百貨店のひどく込み合う時刻に、第一階の昇降機入り口におおぜい詰めかけて待っている。昇降箱が到着して扉が開くと先を争って押し合いへし合いながら乗り込む。そうしてそれが二階へ来ると、もうさっさと出てし・・・ 寺田寅彦 「蒸発皿」
・・・ 偶然その日の夕飯の膳で私たちはエレベーターの話をしていた。あれをつるしてある鋼条が切れる心配はないかというような質問が子供のうちから出たので、私はそのような事のあった実例を話し、それからそういう危険を防止するために鋼条の弱点の有無を電・・・ 寺田寅彦 「断水の日」
・・・坑内の換気のため、エレベーターやトロを動すために、動力室では五人の熟練工が絶えず働いているが、感服したのはその安全装置である。唸って震えている、巨大なモーターの周囲は油さしやその他にごく必要な部分だけを露出して強い金網で覆ってある。調帯も、・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
出典:青空文庫