・・・ 五 人民的なオーケストラ 何故こんなにしつこく社会と文化の今日のありようについて、わたしたちは追求せずにいられないのでしょう。わたしたちの心にあるこの抗議と抵抗の動機は、人間らしい、美しい、瑞々しい人生をもち・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ダディーは長野宇平治氏と話し、オーケストラは鳴る。 十一日 本田をたずねようとしてミルス・ホテルに行く番地をききに来る。ダディーはかえらず。自分は赤いスウェターを着る。ネクタイの先のほつれたのを縫ってあげる。 十二日 博物館・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・それに、このひとの指揮ぶりは特徴がつよくて、オーケストラに向って指揮棒が縦に縦にと働きかけて行く。繊細、強靭、且疳がつよくて、音に対する態度は貴族的であり命令的である。嵩よりも線の感じのつよい指揮の態度なのであった。 私の好みに必ずしも・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・劇場のオーケストラの下っぱヴァイオリンを弾いていたその先生は、パン店の帳場から金を盗み出してポケットへ入れようとしているところを、ゴーリキイに発見された。彼は唇をふるわし、色のない目から油のように大きい涙をこぼしながら、ゴーリキイに訴えた。・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・劇場のオーケストラの下っ端ヴァイオリンを弾いているその先生は、パン店の帳場から金を盗み出してポケットへ入れようとしているところを、ゴーリキイに発見された。彼は唇をふるわし、色のない目から油のように大きい涙をこぼしながら、ゴーリキイに訴えた。・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・我々の眼や我々の意欲は、このオーケストラを伴奏としてさらに燃え、さらに躍動しようとする。そうしてこの心は自らを表現しないではやまない。たとえ我々の生命の沸騰が力弱く憐れなものであるにしても、我々はなお投与すべき力の横溢を感ずる。我々は不断に・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
・・・ ところでオペラの統一はオーケストラの指揮者が握っているが、人形芝居にはこのような指揮者がいない。しかも人形の使い手、語り手、弾き手は、直接に統一を作り出すのである。それは古くから言われているように「息を合わせる」のであって、悟性の判断・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
出典:青空文庫