・・・ きょうが目には見えない女と子供のひとつの旗日であったように、誰の目にも見えないカドリールの輪がある。そうひろ子は思った。古風なカドリールの音楽につれて、手から手へ繋がりあって、送られて、まわって、又新しい手につながれて動いてゆく、見え・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ からりとした男児運動場のところへ、ベビー・オルガンをもち出して、六年女児は体操の時間にカドリールとコチロンを習った。タータタタと空に響くオルガンのメロディーにつれて、えび茶や紫紺の袴をつけた六十人ほどの少女が、向い会って、いっせいにヨ・・・ 宮本百合子 「藤棚」
・・・ 二人の将校はわたしたちの後に立って、おしきせとの問答をきいていたが、なかの一人が、わたしに向って、カドリールでも踊る時のように、腰をこごめながら、「あなたは日本の女の方ですね」と云った。「え、そうです」「我々はよく日本・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫