・・・ キュリー夫人などが居るではないかという抗議に対しては、「そういう立派な除外例はまだ外にもあろうが、それかといって性的に自ずから定まっている標準は動かされない。」 モスコフスキーは四十年前の婦人と今の婦人との著しい相違を考えると・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・「キュリー夫人伝」を書いて、日本にもしたしまれているキュリー夫人の二女エヴ・キュリーは、一九四三年に「戦士のあいだを旅して」という旅行記をニューヨークから出版した。それがさいきん「戦塵の旅」という題で、ソヴェト同盟旅行の部分だけ翻訳出版・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・の映画や「キュリー夫人伝」に讚歎するとき若い婦人たちはそれぞれの主人公たちの伝奇的な面へロマンティックな感傷をひきつけられ、科学というとどこまでも客観的で実証的な人間精神の努力そのものの歴史的な成果への評価と混同するような結果をも生むのであ・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・世界の平和と正義のためにたたかい、いくたの経験をなめているキュリー夫人・ロットン夫人・クーチュリエ夫人などの活動のうちに誠実なアンネットは生きつづけているし、彼女の善意の試みやいくつかの矛盾は、より解決に向って発展させられつつある。ロマン・・・・ 宮本百合子 「彼女たち・そしてわたしたち」
・・・○ キュリー夫人伝の話が出る。確に近頃では興味深く且つ感動的な本であった。あの本やパストゥールの「科学者の道」の映画がああいう感動をもって一般に受けいれられるという事実は複雑な時代の感情をも語っていることだ。キュリー夫人が、夏どこかの田・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
一九一四年の夏は、ピエール・キュリー街にラジウム研究所キュリー館ができ上ってキュリー夫人はそこの最後の仕上げの用事と、ソルボンヌ大学の学年末の用事とで、なかなか忙がしかった。フランスの北のブルターニュに夏休みのための質素な・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ キュリー夫人伝は近頃非常にひろく多勢の若い人たちに読まれた本でした。おそらく、この雑誌の読者のかたも読んでいられるでしょう。そして、きっといろいろな感動をうけながら読み終られたことだろうと思います。キュリー夫人は、疑いもなく世界の偉い・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・「科学者の道」や「エールリッヒ」「キュリー夫人」などにさえ、私たちは感動し、毅然とした人間精神の美しさに詩と慰藉とを与えられた。人間が人間を生かし殺す力の媒介物たる金銭というものの魔術性をあらわにし、それが近代社会を支配する大怪物として蓄積・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・こういう時代での生きかたとしては、或る場合、騒がしい立身出世の波をも静に自分たちの横を行きすぎさせておけるだけの真の落ちついた態度が、妻としての若い婦人に必要なこともあろう。キュリー夫人の伝記は、殆どあらゆる若い人々によまれたのであるが、キ・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・マダム・キュリーは小学生だったとき、奪われている母国語についてどんな痛苦を経験したろうか。ワンダ・ワシレフスカヤの文学は、ポーランドの人々が真に人民のいのちを生きる言葉としてポーランド語をとりかえしてゆく一歩一歩の間から生れた。 日本の・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
出典:青空文庫