・・・四線で南に着き、それからなお二百キロ北方に進んだ。 兵士達は、執拗な虱の繁殖になやまされだした。「ロシヤが馬占山の尻押しをしとるというのは本当かな?」もう二十日も風呂に這入らない彼等は、早く後方に引きあげる時が来るのを希いながら、上・・・ 黒島伝治 「チチハルまで」
・・・ カルネラは体重一一九キロ身長二・〇五メートル、ベーアは九五キロと一・八八メートルだそうで、からだでは到底相手になれないのである。 しかし闘技中にカルネラは前後十二回床に投げられた。そのうちの一回では踝をくじかれ、また鼻をも傷つけら・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ ある軍人の話によると、重爆撃機には一キロのテルミットを千箇搭載し得るそうである。それで、ただ一台だけが防禦の網をくぐって市の上空をかけ廻ったとする。千箇の焼夷弾の中で路面や広場に落ちたり河に落ちたりして無効になるものが仮りに半分だとす・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・ ある軍人の話によると、重爆撃機には一キロのテルミットを千個搭載しうるそうである。それで、ただ一台だけが防御の網をくぐって市の上空をかけ回ったとする。千個の焼夷弾の中で路面や広場に落ちたり川に落ちたりして無効になるものがかりに半分だとす・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・六十五キロだそうである。これくらいのかわいいのだといわゆる機械的バーバリズムの面影はなくて、周囲の自然となれ合って落ち着いている。狭い発電所の構内には、おいらん草が真紅に美しく咲き乱れている。発電所から流れ出す水流の静かさを見て子供らが不審・・・ 寺田寅彦 「軽井沢」
・・・メートルとキログラムの副原器を収めた小屋の木造の屋根が燃えているのを三人掛りで消していたが耐火構造の室内は大丈夫と思われた。それにしても屋上にこんな燃草をわざわざ載せたのは愚かな設計であった。物理教室の窓枠の一つに飛火が付いて燃えかけたのを・・・ 寺田寅彦 「震災日記より」
・・・ その理由は、各三角点から数十キロないし百キロの距離にある隣接三角点への見通しがきかなければならないからである。それだから、三角測量に従事する人たちは年が年じゅう普通の人はめったに登らないような山の頂上ばかりを捜してあちらこちらと渡って・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・ 新聞で見るとソビエトの五か年計画の一つとしてハバロフスクに百三十キロの大放送局を建設し、イルクーツク以東に二十キロ以上の放送局を五十か所作るということである。これが実現した暁には北西の空からあらゆる波長の電磁波の怒濤が澎湃としてわが国・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・ 一冬で、巨大な穴、数万キロの発電所の掘鑿をやるのには、ダイナマイトも坑夫も多量に「消費」されねばならなかった。 午後六時の上り発破の時であった。 昼過ぎから猛烈な吹雪が襲って来たので、捲上の人夫や、捨場の人夫や、バラス取り、砂・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・オツベルときたら、百キロもある鎖をさ、その前肢にくっつけた。「うん、なかなか鎖はいいね。」三あし歩いて象がいう。「靴をはいたらどうだろう。」「ぼくは靴などはかないよ。」「まあはいてみろ、いいもんだ。」オツベルは顔をしかめなが・・・ 宮沢賢治 「オツベルと象」
出典:青空文庫