・・・ライン沿岸地方は、未開なその時代のゲルマン人の間にまず文明をうけ入れ、ついで近代ドイツの発達と、世界の社会運動史の上に大切な役割りを持つ地方となった。早くから商業が発達し、学問が進み、人間の独立と自由とを愛する気風が培われていたライン州では・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ ケーニヒスベルクの町を流れるプレーゲル河に沿う広い家で、幼い娘ケーテは兄と一緒に育った。重く荷を積んで、暗い煉瓦船が河を辷って行く。ケーテの幼い心に印象づけられた最初のリズミカルな生活の姿はその船の情景であった。屋敷のなかの二つの空地・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 第一騎兵隊は、ウランゲルの反革命軍を追っぱらった。第一騎兵隊はデニキンをやっつけた。第一騎兵隊はチェッコ・スロヴァキアの侵入軍をめちゃめちゃにした。――ソヴェトの地図は、第一騎兵隊の偉業をぬきに説明することは出来ない。その光栄ある第一・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・デニキン、コルチャック、ウランゲルらによる国内戦と飢饉と大移動と、それにたいするボルシェヴィキの奮闘などは、ロシアの全人民に無限の経験とエピソードとをもたらした。全人口が「語るべき何事かを」生きたのであった。私たちに近親な作家として、たとえ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 女の言葉の特長 ねーえ と引っぱってというが如し だに おいでた だかね 居ますんね〔欄外に〕ジンゲル Roll accident adapt angel そんな字が見える 天使、天子と・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・彼女が、もしプレーゲル河の河港に働く正直な人々の生活に何の同感ももち得ない娘であったならば、どこに後年の親愛な畏敬すべきケーテが存在したろう。何の動機で、心のすがすがしい若い医師カール・コルヴィッツと結婚出来たろう。彼女は画家たる前に、先ず・・・ 宮本百合子 「まえがき(『真実に生きた女性たち』)」
・・・現に昨年あたりから出たものだけでもエンゲルだとか、トラウトマンだとか、シャアデだとか、流布本ばかりでも沢山ある。進んで専門的の記載となると、いよいよ談が面倒である。しかし私はクノオ・フィッシェルの四冊になって出ているファウスト研究を最尊重す・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫