・・・特に就中、詩人の影響されたことは著るしく、独逸のデエメル、イワン・ゴール、仏蘭西のグウルモン、ジャン・コクトオ、ヴァレリイ等、殆んど近代の詩人にして、ニイチェからの思想的、哲学的影響を受けないものは一人もない。 それほどニイチェは、多く・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」もそういう文学として世界にあまり類のない作品である。ルナールの「にんじん」の主人公は少年であるけれども、どうしてあの小説が既成の社会通念――大人の世界のものの考えかたの俗悪な形式主義への抗議でないとい・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・初孫のジャンがいたずら盛りとなってからは、このジャンがマルクスの最も愛すべき支配者となった。エンゲルスとリープクネヒトが馬になり、カールが馭者台になった。小さなジャンはこの三人の偉大な社会主義者の上に跨って彼の可笑しい国際語で叫んだ。「ゴー・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 一九一七年に、そのころ後藤末雄氏によって訳された「ジャン・クリストフ」を読んだときの感銘。それから「魅せられたる魂」の英訳がはいって来て「アンネットとシルヴィ」「夏」「母と子」と一冊一冊おぼつかなくよみすすんで行ったころの感銘。ロマン・・・ 宮本百合子 「彼女たち・そしてわたしたち」
・・・まだ読まないので解らないが、彼の傑作である「ジャン・クリストフ」完成後、反動的な mood の要求によりて此の、明快な、希望と生活力に満ちた大工と指物を業とする五十男の物語りが書かれたのだと云っている。 主人公は、作者の故郷である Bu・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
フランスの『マリアンヌ』という新聞に、ロシアの大文豪であったレフ・トルストイの孫息子にあたるジャンという少年が、浮浪児として少年感化院に入れられ、そこから脱走して再び警察の手にとらわれたときかいた「ジャンの手記」というもの・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・以前ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」を読んでかなり感心したことがありました。そしてまた今、「マソー・レンチャンテッド」を読んでおりますが、まだほんの初めですから、はっきりしたことはいわれませんが、私はこの作者の見方や、感じ方について・・・ 宮本百合子 「十年の思い出」
・・・日本の女の美は昔風のしとやかさ、髷、袂にあるとヨーロッパの女にいわれて、ある当惑を感じない今日の若い女、ジャン・コクトオの日本を苦しく感じない知識人があるであろうか。最も当惑することは、ヨーロッパ人が日本を観賞するそういうマンネリズムを、国・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・フランス文学が「ジャン・クリストフ」を持っていることは、一つの誇りであるが、この「チボー家の人々」はその後の世代の姿を、描かれている内容によってばかりでなくその描きかたにおいても語っている一つの傑れた収穫である。ジイドの「贋金つくり」と引き・・・ 宮本百合子 「次が待たれるおくりもの」
・・・ すべてが完成されたと云われるこの時代に、すべての名誉も何も金! 金! 金! そこで極端な辛辣さが知性にびまんした。節操を失った。 ジャン・ジャック・ルソーを嘲弄し、サン・シモンをせせら笑う。何ものも信じない。幻滅を通った七月革命後・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
出典:青空文庫