・・・枕もとに行燈の電気スタンドがついている。」「女は、もう、ねむっているのか?」「ねむっていない。目を、はっきりと、あいている。顔が蒼い。口をひきしめて、天井を見つめている。僕は、ねむり薬を呑んで、床へはいる。」「女の?」「そう・・・ 太宰治 「雌に就いて」
・・・ of work, which is in immediate connection with the daily life of people who have little or no understanding of things s・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・樺の木箱、蝋石細工、指環、頸飾、インク・スタンド。 成程これは余分なルーブルをポケットに入れている人間にとっては油断ならぬ空間的、時間的環境だ。少くともここに押しよせた連中は二十分の停車時間の間に、たった一人ののぼせた売子から箱かインク・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・ 卓子の上のスタンドが和らかな深い陰翳をもって彼の顔半面を照し出した。彼方側を歩いているさほ子の顔は見えず、白い足袋ばかりがちらちら薄明りの中に動いて見えた。 十分ばかりも経った時、さほ子はやっと沈黙を破った。「それじゃ、私斯う・・・ 宮本百合子 「或る日」
・・・ 十三日の誕生日にはスエ子からインクスタンドと父から柱時計を貰いました。インクスタンドは黒い円い台の上にガラスの六角のがのっていて、黒いフタのついたもので、しっかりとした感じです。柱時計は皆の意見によると私に似ているんですって。つまりず・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・その前日には、疲れているのに無理であったが北極探険隊の遭難とその救助とモスクの歓迎との実写映画を見てまだ生きていたゴーリキイがスタンドで感動し涙をハンケチで拭いている情景を見ました。五十銭です。何というやすいことでしょう。きょう『日本経済年・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 白地の壁紙、その裾を廻って重くたれ下がって居る藁の掛布、机、ランプスタンド、其等は、今彼女の手にふれる総ての書籍が、遠い故国の母の手元から送られたものであると同様の有難さをもって、彼の手に作られたものである。 地下室の隅から塵だら・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・何処も彼処も、彼には一向面白可笑しくもないラムプスタンドばかり並んでいるのを認めると、忽ち、「なあんだ!」と云う表情を、日にやけた小癪な反り鼻のまわりに浮べる。 もう一遍、さも育ちきった若者らしく、じろりと私に流眄をくれ、かたりと岡持を・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・ 眩しくないように足許の台に乗せたスタンドの明りで、なほ子は皿に盛られたままの煮た果物や赤酒のコップなどを見た。それ等は少くとも午後からじゅうそのままそこに置かれていた様子であった。なほ子は、女中を呼んで、そんなものを皆片づけさせた。・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
・・・それに瑠璃色の硯屏と白い原稿紙、可愛い円るい傘のスタンド、イギリス産の洋紅に染めつけた麻の敷物なぞ、どれもわたくしの好きなものばかりです。 音楽、絵画その他 近頃は音楽を聴くよりも絵を見ることの方が多いのですが・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
出典:青空文庫