・・・胴の間の側に立っているこれもスマートな風体の男が装填発火の作業をする役割である。 艫の方の横木に凭れて立っている和服にマント鳥打帽の若い男がいちばんの主人株らしい、たぶん今日のプログラムを書いてあるらしい紙片を手に持って立っている。その・・・ 寺田寅彦 「雑記(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・見ると、若いスマートなトルコ人の煙草売りであった。横浜にいたことがあるとか言って、お定まりらしいお世辞を言ったりした。結局は紙巻き煙草を二箱買わされることになった。 音楽が水の上から聞こえて来る。舷側から見おろすと一隻のかなり大きなボー・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・黒のオーバーのボタンをきちんとはめてなかなかハイカラでスマートな風采であった。しかし自宅にいて黒い羽織を着て寒そうに正座している先生はなんとなく水戸浪士とでもいったようなクラシカルな感じのするところもあった。 暑休に先生から郷里へ帰省中・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・せんだんの花のこぼれる南国の真夏の炎天の下を、こうした、当時の人の目にはスマートな姿でゆっくり練り歩きながら、声をテノルに張り上げて歌う文句はおおよそ次のようなものであった、「エーエ、ホンケーワーア、サンシューノーオー、コトヒーラーアヨ。。・・・ 寺田寅彦 「物売りの声」
五月十九日の朝。日比谷映画劇場へ、国際観光局の映画の試写を見に行った。「富士山」、「日本の女性」。 そのとき挨拶をしたのは観光局の役人で、スマートなダブルの左右のポケットへ両手の先を入れた姿勢でラウドスピイカアの前へ立・・・ 宮本百合子 「国際観光局の映画試写会」
出典:青空文庫