・・・それを我慢して相手にしないでいたら、最後の捨て言葉に「日本人はもっとゼントルマンかと思った」と言うから、私も「イタリア人はもっとゼントルマンかと思った」と答えて、それきり永久に別れてしまった。私も少し悪かったようである。しかしこんなのはさす・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・御手際が出来てない物は皆落第する――のですかどうか分らないが、とにかくそういうことを私は文展において認め、かつその文展における絵の特色と人間の特色と相対していわゆるゼントルマンに比較して考えたのであります。 それからその次に或人が外国か・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・彼等は皆紳商の子弟にして所謂ゼントルマンたるの資格を作る為め、年々数千金を費す」中略「彼等は午前に一二時間の講義に出席し、昼食後は戸外の運動に二三時間を消し、茶の刻限には相互に訪問し、夕食にはコレヂに行きて大衆と会食す。」とそして、そのよう・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
出典:青空文庫