・・・彼の名をダルガスといいまして、フランス種のデンマーク人でありました。彼の祖先は有名なるユグノー党の一人でありまして、彼らは一六八五年信仰自由のゆえをもって故国フランスを逐われ、あるいは英国に、あるいはオランダに、あるいはプロイセンに、またあ・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・チンダルから昨日手紙をよこして是非来年は拝聴に上るというのサ。そのくらいの訳だから日本人に分るような浅薄ナ論じゃアない。ダガネ、論をする前に君に教えておく事があるのサ。いいかえ、臆えて置玉え、妙な理屈だゼ。マアこうサ。第一、人間というものは・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・ 手近な例を取ってみても、ファーブルの昆虫記や、チンダルの氷河記を読む人は、その内容が科学であると同時に芸術であることを感得するであろう。ダーウィンの「種の始源」はたしかに一つの文学でもある。ウェーゲナーの「大陸移動論」は下手の小説より・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・少しのチンダル効果さえ示さない全く不可視な固体コロイドは考えられないとすれば、「不可視人間」もまた考えられなくなる道理である。 以上は別にウェルズの揚げ足をとるつもりでもなんでもない、ただ現在の科学のかなり根本的な事実と牴触するような空・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・hould―decorously.Lifting my axe, I split her skull,And the edge since then has been notched and dull. Whi・・・ 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・山、氷河、および地殻の歴史を語られるにつれて、私たちの心によみがえるのはチンダルの「アルプスの旅より」「アルプスの氷河」などである。どちらも岩波文庫に訳されているのは知られるとおりである。アイルランド生れの物理学者であったジョン・チンダルは・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・チンダルの『アルプス紀行』はもうおよみになりましたか。お気に入りましたか? 私は写真で涼ましてあげたいと思うのです。この花の匂いは庭の白いくちなし。匂います? 今晩封じこめておいてあしたの朝とり出して送るのですが。 第二信のうち。七・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ チンダルのアルプス紀行は、科学と文学との関係で、寺田氏とは異った典型であると思う。チンダルは科学者の心持で終始一貫して、その科学精神の勁くリアリスティックであることから独特の美を読者に感じさせる。所謂文学的な辞句の努力や文学的感情と云・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ * 面白い本と云えば、羽仁五郎『ミケルアンジェロ』小倉金之助さんの、『家計の数学』山の好きな方に、チンダル『アルプスの旅より』又は『アルプスの氷河』など興味あるでしょうし、女の活動面が新しく展かれてゆく一つ・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・ 自分に、強いて心をダルにする境遇は、とても辛棒することは出来ない。林町に対しての貴方の心持は判る。けれども、どうか自分の心持に丈は、もう少し寛大であって欲しい、陰険でなくなって呉れ、と願んだのである。 Aは、それは、余り、私が彼の・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫