・・・ものを見ました――底なき雪の大空の、なおその上を、プスリと鑿で穿ってその穴から落ちこぼれる……大きさはそうです……蝋燭の灯の少し大いほどな真蒼な光が、ちらちらと雪を染め、染めて、ちらちらと染めながら、ツツと輝いて、その古杉の梢に来て留りまし・・・ 泉鏡花 「雪霊続記」
・・・ 障子を開けたままで覗いているのに、仔の可愛さには、邪険な人間に対する恐怖も忘れて、目笊の周囲を二、三尺、はらはらくるくると廻って飛ぶ。ツツと笊の目へ嘴を入れたり、颯と引いて横に飛んだり、飛びながら上へ舞立ったり。そのたびに、笊の中の仔・・・ 泉鏡花 「二、三羽――十二、三羽」
・・・ ツツと彼方の端から順々に押して来るので、此方の端のは、止り木の上で片脚を幼く踏張り、頸を曲げて身を支えている。それでもかなわなくなれば、構わない。彼はさっと立って頭の上から真中に割り込み、また自分で、ツツ、ツツと仲間の方によって行くの・・・ 宮本百合子 「小鳥」
出典:青空文庫