・・・連れの男も上衣のボタン・ホールにリボンでこしらえたレーニンの肖像入りの飾りなどがついている。 小さい鈴蘭の束をさしたのもいる。 前日大群衆に揉みぬかれた都会モスクワと人とは、くたびれながらも、気は軽い。そう云う風だ。 店はしまっ・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ ――○――○吉田さんのところ、○フィティア 自分の部屋、ダニエルの、和田の。ホール、 ○病院、 ○キャムパス。リス、楓、ぬれて横わるパン、インディアン ダンス○図書館 ○往来、 插話は此処へ入る・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・同時に Earl Hall に於て尾崎行雄の演説がある。其をききに行きたい人もあるので、どちらにするかと云うことが少し問題になり、結局、Earl に行く。矢田夫人に会う。今日まで何うしても会えなかった和田が野中夫人と来て居るのを知る。帰りに・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ あっちの根元に立派なホールがあって、集った人達が笛を吹いたり※イオリンを鳴らして居るかと思うと、すぐここの根元では、すばらしい天蓋のある乗物にのって美くしい女王がそそり立った城門から並木道へさしかかって居る。 あー、あの可愛い女の・・・ 宮本百合子 「草の根元」
・・・ ホールで、我々は「一寸御飯をたべたいのだが」と云った。「どうぞ此方で暫くお待ち下さい」 傍の客室に案内された。手套をとり乍ら室内を見廻し、私はひとりでに一種の微笑が湧くのを感じた。長崎とは、まあ何と古風な開化の町! フ・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・ ホールへ入りながら、そして、外側はあんな青虫のように青かったのに、内部一面は見渡す限り茶色なのに、また異った暑気を感じながら、私は、「一寸お昼がたべさせて欲しいのだが……」と告げた。――これは予定の行動であった。若し第一瞥が余・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・広いホールに、時間が来たのにまだ現れない前線からの良人を待って、踊りを所望されたカッスル夫人が、不安な白鳥のように孤独でたゆたっている。ところへ、カッスルが入って来て、ああ、と両方からよりそって手をとりあったその感情から、静かな、劬りのある・・・ 宮本百合子 「表現」
・・・売笑婦、浮浪児が増大するばかりで、六・三制の予算は削られ、校舎が足りないのに、野天で勉強する子供らのよこで、ダンス・ホールと料理屋はどんどん建ってゆきます。 すべてこれらの日々の不合理をいきどおり、不満を抱き、解決の道を求めている人民の・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・その筆頭はスクータリー病院の院長ホール博士と連隊長連であった。女と戦争と何の関係があるのか。彼らはこの観念から抜けられなかった。軍医、看護卒、看護婦、病院関係の諸役人と大臣たちも、ナイチンゲールを天使とは考えられない人々の群であった。おそろ・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・ 丁度、二人がしっくりと抱き合って暮す時の感じを、全体的な、ホールサムな満ち足りた生存だとすると、数千哩互を隔てられた彼女自身の一人の存在は、まるで、その円らかな一つの肉体を、真中から、無残にも二つ切りにして、その生々しく濡れた切口を、・・・ 宮本百合子 「無題(三)」
出典:青空文庫