・・・巻かれた奴あ、ギュッと巻き締められて、息の根を止められちまわあな。ボーイ長を見な。奴あ泣寝入りと云いたいんだが、泣寝入り処じゃねえや、泣き死にに死んじゃったじゃねえか。ヘッ、毛も生えないような、雛っ子じゃあるめえし、未だ、おいら泣き死にはし・・・ 葉山嘉樹 「浚渫船」
・・・ 不人情なことを云うと承知しねえぞ、ボースン、ボースンと立てときゃ、いやに親方振りやがって、そんなボーイ長たあ、ボーイ長が異うぞ! 此野郎、行って見ろったら行って見ろ!」 見習は、六尺位の仁王様のように怒った。「ほんとかい」「ほ・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・ いわゆる、マルクス・ボーイ、エンゲルス・ガールという名ができたほど、当時は広汎に小市民層の若い男女がマルクシズムをうけ入れた時代であった。 それらの急進的な若い男女があふれるような活力と感受性とを傾けて、学内の活動などに吸収されて・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・そこは芸術家の多く住む気取った一区画として知られていますが、そこの若い人々が出している『プレー・ボーイ』という同人雑誌などは、あちらの新らしい、先へ先へ行こうとする所謂「若い芸術家の群」の気分を示していると思います。詩、絵、短篇小説類を集め・・・ 宮本百合子 「アメリカ文士気質」
・・・農場だって、ホテルのボーイ溜りにだってこれはある。労働者クラブの図書館。農民の家の図書館。夏休み、勤労者が一ヵ月の有給休暇で「休みの家」へ行く時には、その附近に大抵図書館の出張所が出来る。 現にわたしがレーニングラード附近に一夏暮した時・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・九日から毎日ボーイがお使いに来て書けた丈の原稿をもってゆくという風で十三日の朝七時頃すっかり七十二枚かき上げました。小説としてよいかわるいかとにかく全力的に書いたことだけ自分にわかって居ると申す工合です。いずれにせよ、「小祝の一家」よりはよ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・各地の被害 震源地は丹那盆地 死者二百三十二名 伊豆震災救済策 震災地方の納税減免 国庫負担法で業務教育費交付 両腕の動かしかたに共通の一種独特の職業的癖をもっている日本の列車ボーイが沈着な声で誰かに云ってる。 ・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・ 近代倫敦ボーイのある者は生涯到来することなき自動車購入の時節を空しく待ったりしないで、たとえばこの土曜日の夕方だ。山の手をぶらぶら歩きしていた十六歳のジョンソンはふと或る門の前に止った一台のオウバアンを認めた。二人乗用の新型で、何だか・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・その途中でボーイに、「あの男を知っているの? ここのもの?」と、きくとボーイは逆に妙な顔をして、「ヘエ? あなたのお知り合いだと思ってましたが、そうじゃなかったんですか」と云う次第だ。 窓からみると外は小さい公園だ。・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
・・・he was, how good,I cannot tell you. If I could,You too would love her.Procter : "The Sailor Boy."ミス、プロクト・・・ 若松賤子 「忘れ形見」
出典:青空文庫