・・・T大学の夜間部にかよっていた。マルキシストである。実際かどうか、それは、わからぬが、とにかく、当人は、だいぶ凄い事を言っていた。その杉浦透馬に、勝治は見込まれてしまったというわけである。 生来、理論の不得意な勝治は、ただ、閉口するばかり・・・ 太宰治 「花火」
・・・ 七 ファシストはアルプスを愛し、リベラリストはラインやエルベの川の景色を、マルキシストはツンドラや砂漠の景色を好むかもしれない。松やもっこくやの庭木を愛するのがファシストならば、蔦や藤やまた朝貌、烏瓜のよう・・・ 寺田寅彦 「KからQまで」
・・・日本のマルキシストなどとはだいぶちがった感じのする人たちであった。映画監督のシュネイデロフ氏はだれも格好な話し相手がなくて、すみのほうの椅子に押し黙って所在なさそうに見えた。日本の学者たちの、この人にはおそらくはなはだ珍しかったであろうと思・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・それで政治家、軍人、実業家、ファシスト、マルキシスト、テロリスト、いずれもこんな不定な未来の事は問題にしていない。それを問題にするのはただ一部の科学者と、それから古風な宗教の信者とだけである。いちばん仲の悪いはずの科学者と信者とがここだけで・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
・・・きわめて非マルキシスト的な態度である。「樹のない村」の検討において特に作家とオルグ的活動についての分裂的認識の点を強調したのは、今日われわれプロレタリア作家に課せられている階級的課題の実践的理解と連関をもっているからである。今日プロレタ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・れ多種多様な発展の段階にあって、プロレタリアートの世界観とその複雑多岐な実践に結びつけられ建設に寄与するものであって、社会主義建設の見とおしと方向において一致していても、必ずしも皆が皆いわゆる卓抜なるマルキシストではないわけです。 ソヴ・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・もし知識人にとって、現在あるがままの知識人であることに疑いを抱かせ、その精神を混乱せしめ従って社会的存在意義を危うくするものが敵であると考え得るならば、横光は、なぜ一人の実践力あるマルキシストを作中にひきこんでこなかったか。 雁金のかわ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・初期のマルキシストをふくむ急進的インテリゲンチアは、饑饉地方に出かけて行って、その救護や闘争のために全力的援助をした。饑饉が終るとコレラが蔓延し、一揆があちらこちらで起ったが、このとき、怒った大衆の標的とされたのは誰あろう、ともに餓えて疫病・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
出典:青空文庫