・・・ 本年のはじめごろ『雄鶏通信』が国外のルポルタージュ文学特集を行ったが、その内容について何かの関心をおこさせられた読者は、わたし一人でなかったろうと思う。中島氏の文章はサロン五月号にのった吉田満氏の「軍艦大和」が「全く戦時型スタイル」で・・・ 宮本百合子 「作家は戦争挑発とたたかう」
・・・そのような労農通信員のルポルタージュ・コンクール、小説コンクールももたれ、優秀な作品は出版される。すべての出版物は、特別なもののほか、いつもルポルタージュや小説、詩のための場面を、大衆の中からの執筆者に向って開放している。現代の若い作家の大・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・その意味では、火野の諸作も幾多のルポルタージュも文学の基調を一変させるものではなかった。それらのものと、従来の文学とはそれぞれのものとしてありつづけたのである。 ところが、この年の初頭に一部の指導的な学者・文筆家が自由を失い、また作家の・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
集った原稿をよんで、生活のルポルタージュというものは案外むずかしいものであることを深く感じました。 ごく主観的に自分の気持というものを自分の気持の内からだけ書いた感想のようなものが多いことも、現代の社会での若い婦人の生・・・ 宮本百合子 「新女性のルポルタージュより」
・・・エレンブルグは非常にしばしばフランスその他国外に暮し、フランスが中心になって反ファシズム闘争の人民戦線運動をおこした当時、活溌なルポルタージュを発表した。ヨーロッパ資本主義の国々における民主的であり進歩的である集団と、ソヴェト同盟の達成との・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ということが明瞭にされる必要があると思います。これが新日本文学会への宿題の一つではないでしょうか。 新日本文学会の東京支部は、「東京の一日」というルポルタージュ文学を動員しました。ここへは非常に広汎な作家が参加し、一冊の本としてまと・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・小説、さもなければルポルタージュ。これまでは、そういう大きい文学的区わけで話された。だが、そのほかにサークルの人々の文筆的な表現は職場の壁新聞に生かされることができるし、労農通信という方向で、どう生きてゆくかというその問題にたってひらかれて・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
去る十一月一日発行の『文学新聞』に評論家の佐藤静夫氏が三鷹事件の被告宮原直行さんの令兄にインタービューしたときのルポルタージュがのせられていた。商業新聞のやりかたにいためられてはじめは会うのも話をするのもいやがっていた令兄・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・そのほか多くのルポルタージュ、民主主義文学についての感想などがかかれはじめている。 一九四六年四月に網野菊の「憑きもの」が発表された。この作品は第一作品集『秋』から『光子』『妻たち』『汽車の中で』『若い日』その他二十余年の間つみ重ねられ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・文学の成長のための新しい土としてルポルタージュが待たれたのは程遠いことではなかった。だがルポルタージュは、文学に生新な局面を開花せしめることは出来なかった。この間の消息が、今日の文学の帯びている複雑な相貌なのではなかろうか。 よかれあし・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
出典:青空文庫