・・・において、作者は、従来階級人の獄中生活を描いた作品が、多かれ少なかれ、からみつかれていたロマンティシズムを払いのけて、今日の拡大されている階級的対立の現実から、きわめて地道に階級的普通人というものを書こうと努力していると思われる。 私は・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・日本の人が日本の在来の心に壮士風のロマンティシズムと感激とを盛って大陸にいって書いて来る文学の肉体・呼吸・体臭は大陸の文学の輪廓を出しにくいのが目下の現実であり、そこに文学としての畸形が生れている。 大石さんなどでも、書きにくさについて・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・ 国民の文学という場合、自身の雄壮を自身の耳に向ってうたう感懐に立ったロマンティシズムのほかに、国民の日々の生活が刻んでいる像を、あらゆる真実の姿でうけいれ、創り出してゆく旺んな創造力の発動にたえるだけに、日本の雄壮な精神も成熟して来て・・・ 宮本百合子 「文学は常に具体的」
・・・ファシズムの持ち前である生物的な同時に権力的な幻想の世界は、一種のロマンティシズムのようにあらわれて若いひとびとを戦場にかりたててきたことをみてきました。ファシズムとの闘いには、こういうやわらかい人間の心をわたしたちが正しい方向にもりたてて・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・価も、実にきわめて少数のもののみが理解し得るのであるとして、自分は、ひとりローマをみて来たものの苦しくよろこばしい回顧、高踏的な孤独感を抱きつつ、真直に日本の全く伝統的なものの中に、再び新たに自ら傷くロマンティシズムで江戸の人情本の世界に没・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・若い人たちの現実のゆたかさ、人間らしさであって、おとなが、若い人によって、描き出す夢やロマンティシズムばかりではない。このことは、先頃、ある婦人雑誌が催した、十代のひとたちの座談会に関連して学校当局とその少女、その親との間におこった事件につ・・・ 宮本百合子 「若い人たちの意志」
・・・覚とが、ヘッセの場合では外的な関係なしに、個人的な関係を時代と歴史とに向って浄化しようという観念上の願望と結び合わされているために、現実から脱出する結果を招いて、彼の生活の孤立ととかく死に方向を見出すロマンティシズムとが生じている。美しく純・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・文芸思潮として日本へ入って来たこの自然主義は、当時の日本の社会事情、伝統的習俗の上へ蒔かれて、男女の結合とその生活の内容を観ることでは、ロマンティシズムの詩人たちが、心と姿とを審美的に輝やかしく描いたに反して、肉体的な面、いわゆる獣的な結び・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・ ゴーリキイのロマンティシズムというものはその社会的な発生において、以上のような性質をもっていた。ゴーリキイは後年自分のその時代の作品及び創作の態度を追懐して、「あの時分、私はこの堪えがたい人生の苦痛について、せめてそれを輝かしい調・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
出典:青空文庫