・・・郊外の龍華寺に往きその塔に登って、ここに始めて雲烟渺々たる間に低く一連の山脈を望むことができるのだと、車の中で父が語られた。 昭和の日本人は秋晴れの日、山に遊ぶことを言うにハイキングとやら称する亜米利加語を用いているが、わたくしの如き頑・・・ 永井荷風 「十九の秋」
・・・「一連の非プロレタリア的作品」という論文は当時やかましく論議されたものである。わたしという一人の作家にふれる場合、見のがすことのできない母斑のようにあつかわれても来ている。民主主義文学運動がはじまってから蔵原惟人、小林多喜二、宮本顕治に・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・云いたい事が胸先にグングンこみあげて来は来ても、一連りの言葉には、どうしてもまとまらなかった。 お金への手土産に、栄蔵は少しばかりの真綿と砂糖豆を出した。 こんなしみったれた土産をもらって、又お金は何と云うかと、お君は顔が赤くなる様・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・一九三三年一月の『プロレタリア文学』に発表された「一連の非プロレタリア的作品」という論文と、そののち同誌に発表された自己批判の文章とは、当時の政治的文学的混乱の大渦巻をリアルな背景として見て、はじめてその誤謬をも理解することができる性質のも・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ 敗戦後の日本に、肉体派とよばれる一連の文学があらわれた。過去の日本の封建性、軍国主義は、日本のヒューマニティーを封鎖し、破壊し、生命そのものをさえ、その人のものとさせなかった。ヒューマニティーの奪還、生命に蒙った脅迫への復讐として、あ・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・ さらに文化の民族性ということを強調する一連の学者がある。これまでの歴史を見ると、文化の面において、特にこの点を強調した時代がしばしば認められるのであるが、この解釈に従うと、文化というものはその文化を持つ民族の性質によって絶対的に左右さ・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・けれども、支えて放たれない光りを背に据えた一連の山々は、背後の光輝が愈々増すにつれて、刻一刻とその陰影を深めて参ります。そして、宛然蹲る大獣のように物凄い黒色が仄明るい空を画ると、漸々その極度の暗黒を破って、生みたての卵黄のように、円らかに・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ これら一連の老大家たちの作品の中で、よかれあしかれ最も世評にのぼったのは荷風の「ひかげの花」であった。当時、批判は区々であったが、大たい内容はともかく荷風の堂に入ったうまさはさすがであるという風に評価された。そのうまさを買わないで、内・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 一月号所載の中條の論文「一連の非プロレタリア的作品」に対しては多くの同志たちの批判が加えられ、又筆者自身自己批判するところもあった。しかし、論文に対する批判そのものに又種々討論さるべき点があったので、筆者の自己批判並び批判の再吟味とし・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ その時分、私の書いた「一連の非プロレタリア的作品」という作品批評と感想とをとりまぜた論文めいたものが、その「やっつけ主義」批評ののろうべき見本であるかのように、紙つぶてをなげつけられた。 今、その時分のことを思い起すと、私は実にし・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
出典:青空文庫