・・・彼はその頃せめてもに無為な生活から脱けだそうとして、いつかは上演されるだろうことを夢みながら、ひそかに戯曲を書こうと思い立っていたのだが、しかしそんな道をそんな風に帰って来た状態でどうして戯曲の仕事が出来たろうか。出来なかったのである。中庭・・・ 織田作之助 「道」
・・・『出家とその弟子』は邦枝完二君の監督で林君、村田君等が、有楽座で上演したのが最初の上演だった。村田実君は青山杉作君の親鸞に唯円を勤めて、自分が監督して京都でやった。後帝劇で舞台協会の山田、森、佐々木君等がはなばなしくやった。今の岡田嘉子・・・ 倉田百三 「『出家とその弟子』の追憶」
・・・維新前の話であるが、通りがかりの武士が早乙女に泥を塗られたのを怒ってその場で相手を斬殺した事件があって、それを種に仕組んだ芝居が町の劇場で上演されたこともあったようである。 これらの泥塗事件も唯物論的に見ると、みんな結局は内分泌に関係の・・・ 寺田寅彦 「五月の唯物観」
・・・という政治的キャバレーをひらいて、おなじ名の諷刺劇を上演したり、娯楽と宣伝とをかねた政治的集会を催し、演劇的才能と行動性とを溌剌と発揮して活動しはじめた。 ところが二月二十七日の夜、ドイツ国会放火事件がおこった。真の犯人はナチスであるが・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・という国内戦時代のコムソモールたちの感情、若さから誤謬は犯しながら雄々しく実践でそれを清算する働きぶりなどを歴史的に見た劇を上演している。ハバロフスクへ潜行運動にベザイスが、絵を描いた貨車にのっかって行く。その中途から頼まれてのせてやった娘・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・ 例えば、左翼劇場で上演した「銅像」を、みんなどんなによろこんで観、あとまでその印象をもっているか。 ところが、諷刺は元来非常に活々した社会性をもっているものだけに、諷刺の対象が時代の影響をうけて変遷するばかりではない。諷刺するもの・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・をたのしく過すのである。 芸術座の出しものは「三肥大漢」だった。 エム・オー・エス・ペー・エス劇場では二日の晩に「憤怒」を上演した。 五ヵ年計画が実施されるにつれソヴェトではだんだん劇場の上演目録も変った。 古典的なオペラ・・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・最近上演された「四つの恋愛」を観たときも私はそのことを強く感じた。「四つの恋愛」はコンスタン・ベネット、シモーヌ・シモン、ロレッタ・ヤング、ジャネット・ゲイナーという四女優を集めてこれらの女優の特色で興味をひこうとしたものであったろうが、案・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・は、上演の為に改作したのだそうだから、無理もないが、意味を自覚しない悪くどさで、失敗と感じた。 宗之助の小町に、些も小野小町らしい大らかさも、才気もなく、始めから終りまで、妙にせっぱ詰った一筋声で我身を呪ったり、深草少将を憤ったりしたの・・・ 宮本百合子 「気むずかしやの見物」
・・・という現代諷刺喜劇が上演されて、好評を博した。なかに新聞記者が記事作成の上に加えられる不便をかこった科白がある。日独協定のことについて、書かれるべき感想は更に多くあるのであろうが、お定の記事が、一等国の大新聞社会欄をあれほどの場面で占め得る・・・ 宮本百合子 「暮の街」
出典:青空文庫