・・・ 公共建築や宮殿のようなものは例外として、中流の、先ず心の楽しさを得たい為に、居心地よい家を作ろうとするような者は、此位の共力が、決して不当なものではあるまいと思います。新らしい家と云うものが、ちっとも、贅沢な、フリーボラスな気分を醸さ・・・ 宮本百合子 「書斎を中心にした家」
・・・その中には、日本の民主化のために骨髄的諸項――たとえば労働組合の政治活動の自由・政党支持の自由・組合員であるからといって不当なとり扱いを蒙ることはないし、検挙をうけたりすることもないようにという条項など――が明文化された。ここまで、日本の労・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・偽証罪として起訴された石川、金の二人の被告を加えた十一名と、自由法曹団の弁護人たちが、七十歳の布施辰治を先頭として、はげしく検事の取調べの不当を非難した第一日の公判廷で、竹内被告の弁護人鍛冶だけが「個々の被告の人権を尊重し、被告個人の特殊性・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 若し、東洋の女性が不当に圧迫せられ、退嬰した状態を、男尊女卑と云うならば、確に西洋の人間は、女尊男卑であると云えましょう。まして、米国人は、その点を、特に強調して伝えられていると思います。 過去に於て中世の騎士気質の伝統を受けてい・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・自分に不当な苦痛や罵詈を与えた者達は、最後まで正しかった者の死屍に対して、どんな悔恨に撃たれながら、頭を垂れるだろう、白い衣を着せられ、綺麗な花で飾った柩に納められた自分が、最後の愛情によって丁寧に葬られる様子が、まざまざと目前に浮み上って・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・にとって面白くためになる『働く婦人』が毎号発禁になると全く同じです。「働く婦人の夕べ」こそ本当に働く婦人のためになる催しだからです。雑誌を発禁にしたり、「働く婦人の夕べ」に不当な解散をくわせたりして、よくわけの分らない大衆の目に日本プロレタ・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・ 私のようなものが、お前にお礼を云うのさえ、ほんとなら有難すぎることなのだという口吻が、ありありと言葉の端々に現われているけれども、禰宜様宮田はちっとも不当な態度だと思わなかったのみならず、彼女がほのめかす通り、お礼などを云われるのはも・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・そして私は私の監視者である保護観察所の所長に会って、執筆禁止の不当なことと、生活権を奪ったことについての異議を申したてた。当時は、一般ジャーナリズム、文化人がまだこのような言論抑圧に対して、その不当を表明するだけの気持をもっていた。各方面か・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・しかし美のゆえに礼拝せらるべき芸術品としては、確かにパウロから不当な取り扱いを受けた。今やその不当な取り扱いは償われ、ただ芸術品としての威厳をもって人々の上に臨んだのである。 かくのごとき偶像の再興はまた千年にわたる教権の圧迫への反抗を・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・つまらない芽を大きくするためにいい芽がたくさん閑却されても、それを不当だとして罰する力はないのです。 実を言えばそのテエマは、おのおの独特な形で、あらゆる人間の内にひそんでいるのであります。そうしてそれがハッキリと現われて来れば、雑然と・・・ 和辻哲郎 「すべての芽を培え」
出典:青空文庫