・・・そしたら先生がピアノを買った方がいいだろうというすすめで、一台中古を見つけてくれた。或る晩、九つの私は父につれられて本郷の切通しだったか坂の中途にある薄暗いその楽器屋へピアノを見に行った。いく台も並んである間にはさまって、その黒いピアノは大・・・ 宮本百合子 「親子一体の教育法」
・・・を読むと、或る年の誕生日のお祝いに彼女のお母さんが一台の中古の飛行機をくれたことから、彼女の婦人飛行家としての出発が始まったことが語られていて、そういう日常の感情をこしらえた条件としてアメリカにフォードが行きわたっているということの文化上の・・・ 宮本百合子 「この初冬」
・・・ 後から行く車の幌のすきから、林町の家でもらった中古の小箪笥が遠くまでも見えて居た。 翌々日かなりしっかりした手蹟で安着の知らせと行く先の在所と両親の言伝を書いたさきの手紙がとどいた。 それを千世子はいつもになく引出しにしまった・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
・・・自分用の小さい中古の急須と茶のみ茶わんとをひと重ねにして、それを手のひらで上から包むようなもちかたでもって、台所へ出て来た。昔風に南側が二間の高窓になっていた、そのかまちの上に急須と茶わんをのせて、七輪の方へ来てやかんをとり、自分ののむ茶を・・・ 宮本百合子 「道灌山」
時代 中古、A.D. 十一世紀頃――A.D. 1077―A.D. 1095 人物 グレゴリオ七世 ローマ法王 ヘンリー四世 ドイツ帝 老人 ヘンリー四世の守役を勤めた人九十・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・なア姉やん、中古でな、ほんまに持って来いやが見せようか。織留のとこに一寸した汚点があるのやが、二円五十銭にしとくわな。」「要らん要らん。銭がないわ。」「直ぐ売れてしまうで今やなきゃあかんぞな。銭なんていつでもええわ。上村の三造さんの・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫