・・・スクラインの「シナ領中央アジア」という本の中にある。 東トルキスタンのヤルカンドにミッション付きの歯医者がいた。この人の所へある日遠方の富裕な地主イブラヒム・ベグ・ハジからの手紙をもった使いが来て、「入れ歯を一そろい作ってこの使いの者に・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 中央アジア東トルキスタン辺の歌謡を見ると勿論色々な型式があるが、中には八、五、八、五の型式がある。例えば。。。。括弧の中が一シラブルである。これらは少しの読み方で七五調に読めば読まれなくはない。 サンス・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・ 中央アジアの旅行中シナの大官からごちそうになったある西洋人の紀行中の記事に、数十種を算する献立のどれもこれもみんな一様な黴のにおいで統括されていた、といったようなことを書いている。 もう一つ日本人の常食に現われた特性と思われるのは・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・北氷洋に中央アジアに、また太平洋に成層圏に科学的触手を延ばして一方では世界人類の福利のために貢献すると同時に、他方ではまた他の科学国と対等の力をもって科学的な競技場上に相角逐しなければおそらく一国の存在を確保することは不可能になるであろうと・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・ 以上は近着の Geographical Review. Oct., 1932. 所載の記事から抄録したものである。 中央アジアではまだ自然が人間などの存在を無視して勝手放題にあばれ回っている。そのために気候風土が変転して都市が砂漠・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
・・・ よく知ってる、中央アジア=タシケントにいた時分始終のんでいました。 あっちじゃいつも青い茶を飲むんです、暑気払いに大変いいんです。 小さいカンの底に少し入っているまんま持って行ったら、手のひらへあけて前歯の間でかんだ。 ――こ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・ほど有名ではなくても中央アジア外蒙古の生産と文化開発の映画で世界に示されている。「リビヤ白騎隊」とこれらの映画との違いは、土地開発に向う一つの勢力と土着民の生存的利害関係とが根本的に違っているところにある。 もしイタリーの映画監督が諸事・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・ゾシチェンコは中央アジアのどこかに避難していて、羊の焙肉をたべていて、やせもしなかった体と、脂肪の沈着した脳髄とをもって、やつれはて、しかし元気は旺盛で、笑いを求めているレーニングラードに帰ってきた。そして自分の店をひろげはじめた。 ソ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 四十何年か前に、スタインの『古代ホタン』を見て、中央アジアの砂漠のほとりに残っている古い都市の残骸から、いろいろな場面を空想したことがある。砂の中に埋もれてわずかに下半身だけを残していた塑像なども、それの好い材料であった。今名取君の撮・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫