・・・二つの女学校の五年生が、このせつのしきたりにしたがって○○と書かれている工場へ、一週に一度ずつ交替に手伝いに出かけている。一つは市立の女学校であり、この場合の性質は、学校の経営的な原因より、むしろはっきり、戦時的認識を若い娘心に銘させようと・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ こういう無駄口はきくが、インガが第三交代の婦人労働者達に約束した托児所増設のための図面は、場所がないと云って、提出しない。「私、今日出して下さるように願っておきましたよ。」「御存じでしょうが……」「どうして? こしらえなか・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・そこをよけて、仕事から引上げて来る労働者、交代に行く労働者。人通りは絶えない。 木橋を境にして、九千人の従業員をもつモスク第一の金属工場「鎌と鎚」が、蜒々と煉瓦壁をのばしている。「郵便」と書いた板の出ている小さい入口をわれわれは入っ・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・五日に一遍休暇日をとって、二交代の工場は三交代に、「間断なき週間」として働こうではないか。「間断なき週間制」は一九二九年の秋から実施された。 暦を組みなおして、各職場にわり当てられた五ヵ年計画第一年第一期の生産経済計画完成に着手したが、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・看守が疲労で蒼くむくんだ瞼をし、「……トラックにのっているはええが、交代の時分にはいずれのったものが降りにゃなるめ。そのとき事件が起きたら、どうするね」 これには監房じゅうが笑い出し、実に大笑いをした。 五分苅の、陸軍大尉の・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・六人が二十四時間を三交代の八時間勤務で働く。ターニャは夜の当直には来なかった。二十歳である。彼女の夫は国立音楽学校でバリトーンをやっている。ターニャは暇があると当直室の机へむき出しの腕をおっつけて代数を勉強した。毎晩六時から十一時まで彼女は・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ しっかりした次の交代者をこしらえるに、コムソモールは子供を産まなくちゃならないんだ。 ――私はそう思ってる。けれどフェージャの考えは違うのよ。 ――ふーむ。どう? ――フェージャは今朝私に云った。赤坊だの、おしめだの、家庭だの・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・ってゆく子供の元気は盛んなもので、ただおばあ様のおみやげが乏しくなったばかりでなく、おっか様のふきげんになったのにも、ほどなく慣れて、格別しおれた様子もなく、相変わらず小さい争闘と小さい和睦との刻々に交代する、にぎやかな生活を続けている。そ・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・ この大番と云う役には、京都二条の城と大坂の城とに交代して詰めることがある。伊織が妻を娶ってから四年立って、明和八年に松平石見守が二条在番の事になった。そこで宮重七五郎が上京しなくてはならぬのに病気であった。当時は代人差立と云うことが出・・・ 森鴎外 「じいさんばあさん」
・・・カンフルと食塩とリンゲルが交代に彼女の体内に火を点けた。しかし、もう、彼女は昨日の彼女のようにはならなかった。ただ最後に酸素吸入器だけが、彼女の枕元で、ぶくぶく泡を立てながら必死の活動をし始めた。 彼は妻の上へ蔽い冠さるようにして、吸入・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫