・・・を作る微晶や固溶体のプランクトンの人別調べは略していた。何万ボルトの電撃という一語であらゆるサージの形を包括していた。放電間隙と電位差と全荷電とが同じならばすべてのスパークは同じとして数えられた。すなわちわれわれはやはり量を先にして質をあと・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・砂糖はパン、肉、茶、石鹸、石油などと一緒に人別手帳によって一ヵ月に一キロ半買うことができる。けれども、かたまりが大きくてそのまま茶のコップには入れられない。胡桃割は割るべき胡桃とともに今モスクワじゅうの金物屋から姿を消しているから、ホテルの・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・一九二九年からは労働者、勤め人、農民という風な人別手帳で何でも買うことになっている。ところでソヴェト同盟は五ヵ年計画で農産物の生産額をウント増し、一人当りの肉、パン、卵、野菜、バタなどの消費量を高めよう――つまりもっともっとプロレタリアート・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・ モスク文化象徴である石油コンロ、薬カン、人別手帖で買ったところの貴重なパンの塊、ソーセージ、――つつましき人生の全必需品がもち込まれて居るのだ。 この湯槽には、だが幸三十四度の温湯がたたえられてある。黒い東洋の髪をぬらしつつ漬って居る・・・ 宮本百合子 「無題(七)」
出典:青空文庫