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・・・ 娘のまきと、さだに守りをされながら、六の小さい裸足の足音は湿りけのある地面に吸いつくような調子で、今来て肩につかまったかと思うと、もうあっちへヨチヨチとかけて行く。「ア、六。 そげえなとこさえぐでねえぞ。 血もんもが出来て・・・
宮本百合子
「禰宜様宮田」
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・・・「今来たのは秋公か?」「お前、秋が安次を連れて来てくれたんやがな。」 安次は急に庭から立ち上ると、「秋公、こら、秋公。」と大声で呼び出した。 勘次は秋三に逢いたくはなかった。「安次か、えらく年寄ったやないか。」と彼は・・・
横光利一
「南北」