・・・去年の秋、僕が蕎麦団子を食べて、チブスになって、ひどいわずらいをしたときに、あれほど親身の介抱を受けながら、その恩を何でわすれてしまうもんかね。」「そうか。そんなら一つお前さん、ゴム靴を一足工夫して呉れないか。形はどうでもいいんだよ。僕・・・ 宮沢賢治 「蛙のゴム靴」
・・・クリスチナに介抱されつつ死ぬ。クリスチナは夫が二人で住もうと云った崖の上の家へ住むために船出するところで終り。ガルボは、いい女優の特長として幅があるし、流動的だし、含蓄があるし、私は好きな女ですが、この平凡で謂わばセンチメンタルな映画を見て・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 俺らあおめえん介抱まじゃあ請合わねえぞ」と云いながら、誰かがひどく彼の肩を揺った。 スースーとちょっとずつ区切りをつけながら、蜘蛛が糸を下げるように、だんだんと真暗な底の知らないところへ体が落ちて行くように感じながら、どうして・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・六週間仲よくつき合ったp.95○連隊長マレールのリュシアンに対する悪感情○決闘して負傷したリュシアン 兵士のメニュエルに介抱される メニュエルとリュシアンの感情p.114 ナンシイの名医王党派デュ・ポワリエ氏○の・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
・・・長十郎は平生忠利の机廻りの用を勤めて、格別のご懇意をこうむったもので、病床を離れずに介抱をしていた。もはや本復は覚束ないと、忠利が悟ったとき、長十郎に「末期が近うなったら、あの不二と書いてある大文字の懸物を枕もとにかけてくれ」と言いつけてお・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・ 蠣殻町の住いは手狭で、介抱が行き届くまいと言うので、浜町添邸の神戸某方で、三右衛門を引き取るように沙汰せられた。これは山本家の遠い親戚である。妻子はそこへ附き添って往った。そのうちに原田の女房も来た。 神戸方で三右衛門は二十七・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
・・・ るんは祖母をも息子をも、力の限介抱して臨終を見届け、松泉寺に葬った。そこでるんは一生武家奉公をしようと思い立って、世話になっている笠原を始、親類に奉公先を捜すことを頼んだ。 暫く立つと、有竹氏の主家戸田淡路守氏養の隣邸、筑前国福岡・・・ 森鴎外 「じいさんばあさん」
出典:青空文庫