・・・そして、自分も大望を抱いて東京へ飛出しは飛出しても、半年位後にはやせてしおしおと帰って来るか、帰るにも帰れない仕儀になったものは諸々方々に就職口をさがしあぐんだ末、故郷の人に会わされない様なみじめな仕事でも、生きるためにしなければならなくな・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・々することは、読者大衆の側からの鋭い視線にそなえる用意も比較的なくてすむし、本当の国文学研究者たちの、大衆的場面への批判的進出の懸念もさし当りはないという、一種異様な地の利を占めた安全地帯に身をよせる仕儀となるのである。林房雄氏等が、抽象的・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・という本をこの人が書いていて、それにはこまかい銅版刷で世界の終りの日の絵が插画になっているという仕儀である。 母には、天国地獄というものさえ奇怪だのに、まして、叔父の云うことをきけば、親と子とさえ、信仰の有無で最後の審判の日には天国と地・・・ 宮本百合子 「本棚」
出典:青空文庫