・・・ この日に限って、こうまで目立ってたくさんにいっせいにはじけたというのは、数日来の晴天でいいかげん乾燥していたのが、この日さらに特別な好晴で湿度の低下したために、多数の実がほぼ一様な極限の乾燥度に達したためであろうと思われた。 それ・・・ 寺田寅彦 「藤の実」
・・・それでいつか放送局でラジオ相談所として推薦した本郷の某ラジオ屋へ試みに修繕に出したら、今度は断然桁ちがいに感度を低下してしまって、もう拡声器では聞かれなくて、テレフォンでやっと聞こえるようになってしまった。機械を調べてみると、何とかいうあの・・・ 寺田寅彦 「ラジオ雑感」
・・・ もう一度このへんの雪線が少しばかり低下して崑崙の氷河が発達すると、このへんの砂漠がいつか肥沃の地に変わってやがて世界文化の集合地になるかもしれない。 その時に日本はどうなるか。欧米はどうなるか。これはむつかしい問題である。しかしと・・・ 寺田寅彦 「ロプ・ノールその他」
・・・もっとも低下していた昭和七年頃に比べると遙かに上っているが、男と女との差は埋められていないのである。 婦人の性の本来は生殖に重点をおかれているのであるから、社会労働は、常に男の補助の範囲であるのが自然であり、従って賃銀も、いわゆる世帯主・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・そのために製造したバタの品質が低下する。上ナザロフ村にもう一つバタ工場がある。そこの建物はひどい有様だ。扉はこわれている。寒くて働けぬ。この間支配人はクラスノヤルスク村へ牛乳買上決算に出かけた。そこで彼は三昼夜べろべろにのんだくれ、・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・あれやこれやと低下したあるいは逸脱した題材を書きまわるのではなく、プロレタリアートの課題とともに書きすすめる努力こそされなければならない。 須井一の「幼き合唱」と「樹のない村」とはこの観点からわれわれに何を教えるであろうか。「幼き合・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・よいとか悪いとか云っている場合ではない、これも戦争のため、あれも戦争のためと、落付いて反省させるひまさえ与えずに来て、その結果の道徳の低下を、若い人々の責任として丈せめるならば、それは、ずいぶん無残なことだと思います。私どもは、今こそこの数・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・ロシアの農村での文化活動というものは、ツァーの下では無視され、或るときには意識的に低下させられていた。まして、ロシアの農村で、文学的作品がどう理解されるかなどということは、問題ではなかった。フランス語を喋るロシア人は「農民の芸術に対する野蛮・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ある安定を見出せば、そこで全身の調和が生じ、あなたの一等の健康水準ではないまでも、低下したら、したなりに安定しましょう。 気分はやっぱりあなたらしくゆったりしていらっしゃるからほんとうにうれしく存じます。大事にして下さい。ごたごたいうに・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 中学や高校生の質が急に低下して来ていることを、明日の日本のために慶賀する人が果してあるだろうか。形式にしばられれば、徳育も一つの頽廃であることは明らかだと思う。 小学校の先生の不足はこの二三年来到るところで云われている。八年制にな・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
出典:青空文庫