・・・固より一般の需要は十円内外の低廉な種類に限られているのだろうが、夫にしても、一つ一銭のペンや一本三銭の水筆に比べると何百倍という高価に当るのだから、それが日に百本も売れる以上は、我々の購買力が此の便利ではあるが贅沢品と認めなければならないも・・・ 夏目漱石 「余と万年筆」
・・・「宿料低廉、風呂付、食物上等」こんなのは普通なのだ。「ハイドパークに面し地下電気へ三分地下鉄道へ五分、貴女と交際の便利あり」なんと云うのがある。「球突随意ピヤノあり gay society, late dinner」これも珍らしくない。「レ・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ あらゆる分野で、男より低廉な賃銀で過労し、母性の重荷を負った不熟練技術者としての婦人を準備しつつある。その社会的な弱点を改正しようとしないで、女は、女は、と女のおくれをせめつけるのは甚しい矛盾だ。なぜなら、「女は」と女をいやしめる人々・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
出典:青空文庫