・・・あまり長くなりそうだから、手紙はよして、小包だけにすることにしたがしかし、時計を送る小包というのはどうも作り方がむずかしい。それに、ふと手離すのが惜しくなって、――というのは、私もまた武田さんの驥尾に附してその時計を机の上にのせて置きたくて・・・ 織田作之助 「四月馬鹿」
・・・もう少し作り方なり材料なりを親切に研究したのなら、これほどもろくできるはずはないだろうと思われた。銅板を曲げた角の所にはどの道かなり無理がいっているから、あとで適当になますとか、あるいは使用のたびにそこに無理が繰り返されないように構造のほう・・・ 寺田寅彦 「断水の日」
・・・きわめて卑近の一例を引いてみれば、庭園の作り方でも一方では幾何学的の設計図によって草木花卉を配列するのに、他方では天然の山水の姿を身辺に招致しようとする。 この自然観の相違が一方では科学を発達させ、他方では俳句というきわめて特異な詩を発・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
パール・バック女史の問題のつかみ方は、さすがに作家らしくて、わたしにも皆さんにも同感されたのだと思います。パール・バックはアメリカの今日の文明をちょうど子供が新しいすばらしい玩具の作り方を発見して、それに夢中になっている状・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
・・・ そこで我々は能面のこの作り方が、色彩と形似とを捨て去った水墨画や、自然的な肉体の動きを消し去った能の所作と同一の様式に属することを見いだすのである。能についてほとんど知るところのない自分が能の様式に言及するのははなはだ恐縮であるが、素・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
・・・表情を恐ろしく誇張して現わしながら、しかも嘘に陥らず現実性を失わない面相や肢体の独特な作り方は、やはり中央アジアの創始したものではないかと思われる。 わたくしはこういう点が専門家の着実な研究によって明らかにされる日を待ち望んでいる。もし・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫