・・・最後の言を見よ、地下の釈迦も定めし迷惑であろうと、これ何たる言であるか、何人か如来を信ずるものにしてこれを地下にありというものありや、我等は決して斯の如き仏弟子の外皮を被り貢高邪曲の内心を有する悪魔の使徒を許すことはできないのである。見よ、・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・九月初めにはソヴェト同盟にたいする無条件の歓喜に浸っていた彼が、十月には既に中傷している。使徒パウロからユダヤ人サウルへの拙劣な転身をした。驚くほど破廉恥な諸矛盾をその本の中にさらけ出している。党及び政府の一般的な方針に反対する批判の権利だ・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・をかき「戦える使徒」「母の肖像」をかいたパール・バックが、アメリカにかえって、新鮮な感受性と観察と批判とでそこにある社会生活に目をやったとき、この人間を不幸にする刻薄な神の働きを見出したのは深い意味がある。バックはそこで原始的なものの上をい・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・中国の奥地へ入って、そこで生涯を終ったアメリカ宣教師「闘える使徒」として彼女に描かれている父の娘として、ずっと中国で成長し、アメリカの大学に教育され、中国農業問題研究者として権威をもっていた人の妻であった。 バックは中国の民衆生活の日常・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・ 文字通りの「偶像」について考えてみる。 使徒パウロは偶像を排するに火のごとき熱心をもってした。彼の見た偶像は真実の生の障礙たる迷信の対象に過ぎなかった。彼が名もなき一人のさすらい人としてアテネの町を歩く。彼の目にふれるのは偶像の光・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・ロシアの神を信じようとする一人の青年は彼の内にその神の使徒を見る。狡猾と虚偽とを享楽するらしい一人の虚無主義者は、自らを彼の奴隷のごとくに感じている。彼を殺そうとした者は死の前に平然たる彼の態度によって、心の底から覆えされた心持ちになる。こ・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・ここで真に芸術の使徒となろうとする人は生命を賭してロマン・ロオランのごとき人を支持するのである。 人間は神の前において平等である。しかしある人は他の人よりも多くの稟賦を恵まれ、そのより多くの力をもって指導者の位置につくことができる。ある・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・我々はここに享楽的浮浪人としての画家、道義的価値に無関心な官能の使徒としての画家を見ずして、人類への奉仕・真善美の樹立を人間最高の目的とする人類の使徒としての画家を見る。もとより画家である限り、その奉仕は「美」への奉仕に限られている。しかし・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫