・・・これを客観的に識別しようとすればめんどうな分析法によって多数の係数を算出し、さらにそれを統計にかけて表示しなければならない。さらにまた、盲人の触感は猫の毛の「光沢」を識別し、贋造紙幣を「発見」する。しかし、物の表面の「粗度」の物理的研究はま・・・ 寺田寅彦 「感覚と科学」
・・・換言すれば、これら要素の時間的空間的微分係数が小なりという事なり。これが小なる時に等温線や等圧線は有意義となり、これに物理学上の方則が応用さるるなり。 今鋭敏なる熱電堆をもって気温を測定する時は、如何なる場合にも一尺を距てたる二点の温度・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・つまりは遠い昔から近い過去までのあらゆる出来事にそれぞれの係数を乗じて積分した総和が眼前に現われているに過ぎないのではあるまいか。 こんな事を考えたりしながら、もう聞き古した母の昔話を今までとは別な新しい興味をもって聞く事もあった。・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・もっとも、送電線にしても工学者の計算によって相当な風圧を考慮し若干の安全係数をかけて設計してあるはずであるが、変化のはげしい風圧を静力学的に考え、しかもロビンソン風速計で測った平均風速だけを目安にして勘定したりするようなアカデミックな方法に・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・弓の毛髪と振動体とが複雑な週期的相対運動をしている際に摩擦係数がはたして静的係数と動的係数との間を不連続的に往復しているのか、それとももっと複雑な変化をしているのか、これについてはまだだれも徹底的に研究した人はないようである。 クントの・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・をのみこんでいて、従って新聞の与える知識には、いつでもある安全係数をかけた上で利用するから、あまりたいした弊害はないと考えられるかもしれない。有数ないい新聞ならば実際そうかもしれない。しかし正確でなくてもいいからできるだけ早く知るということ・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・質量は物体に含まるる実体の量だというように考えたは昔の事で、後にむしろ力の概念が先になって、物体に力が働いた時に受ける加速度を定める係数というふうに解釈した実証論者もある。電子説が勢いを得てからは運動せる電気がすなわち質量と考えてすべての質・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
出典:青空文庫