・・・のだからなるたけ人の通らない道の悪くない落ちても人の笑わないようなところに願いたい」と降参人ながらいろいろな条件を提出する、仁恵なる監督官は余が衷情を憐んで「クラパム・コンモン」の傍人跡あまり繁からざる大道の横手馬乗場へと余を拉し去る、しか・・・ 夏目漱石 「自転車日記」
・・・御母さんがいっしょになってワーと泣かぬ以上は、傍人が泣かんでも出来損いの御母さんとは云われぬ。御母さんは駄菓子を犬に取られるたびに泣き得るような平面に立って社会に生息していられるものではない。写生文家は思う。普通の小説家は泣かんでもの事を泣・・・ 夏目漱石 「写生文」
・・・ただ傍人より見れば新聞取次店または地方歓迎者の名前を一々列記したるだけはややうるさい感があるが、それはこの紀行の目的の一部であるから固より記者を責むべきものではない。むしろかかる紀行の中へかかる世俗的な目的をも加えしかも充分に成功したる楽天・・・ 正岡子規 「徒歩旅行を読む」
出典:青空文庫