・・・表面は円転滑脱の八方美人らしく見えて、その実椿岳は容易に人に下るを好まない傲岸不屈の利かん坊であった。十 椿岳の畸行作さんの家内太夫入門・東京で初めてのピヤノ弾奏者・椿岳名誉の琵琶・山門生活とお堂守・浅草の畸人の一群・椿・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
どんな小説を読ませても、はじめの二三行をはしり読みしたばかりで、もうその小説の楽屋裏を見抜いてしまったかのように、鼻で笑って巻を閉じる傲岸不遜の男がいた。ここに露西亜の詩人の言葉がある。「そもさん何者。されば、わずかにまね・・・ 太宰治 「猿面冠者」
・・・夕方福岡からきて、明日は鹿児島へゆき、数日後はまた熊本へもどって、古藤たちの学校で講演するというこの男は、無口で、ひどく傲岸にみえた。あつい唇をむッと結んでいて、三吉はゴツンとぶつかるようなものを感じさせる。そのうち、学生たちがまだ彼の演説・・・ 徳永直 「白い道」
出典:青空文庫