・・・そこで僕が思うには、この金貨を元手にして、君が僕たちと骨牌をするのだ。そうしてもし君が勝ったなら、石炭にするとも何にするとも、自由に君が始末するが好い。が、もし僕たちが勝ったなら、金貨のまま僕たちへ渡し給え。そうすれば御互の申し分も立って、・・・ 芥川竜之介 「魔術」
・・・切符を買う元手もなければ売る品物もない。靴磨きをするといっても元手も伝手も気力もない。ああもう駄目だ、餓死を待とうと、黄昏れて行く西の空をながめた途端……。七「……僕のことを想いだして、訪ねて来たわけだな」「へえ」と横堀・・・ 織田作之助 「世相」
・・・と強く響くあとに「奈良通い同じつらなる細元手」と弱く受ける。「ことしは雨のふらぬ六月」はちょっと見るとなんでもないようで実ははなはだしくきつく響いており、「預けたるみそとりにやる向こう河岸」は複雑なようで弱い。「ひたといい出すお袋の事」と上・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
出典:青空文庫