・・・どれをよんでも、名優というものが、すべての芸術を貫く忍耐づよい研究心、真実を愛する精神、克己、根気を基礎に自分を発展させることがわかる。「プラーグの栗並木の下で」を見ているうちに私の心をうったのは、そんな名優とか大俳優とか一生云われるこ・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
・・・ 母は数年来重い糖尿病を患っていたが、それを克己的に養生して治すということは性質として出来なかったし、三年前膵臓の膿腫というのをやった時は、誰しも恢復する力が母の体の中にのこっていようとは考えなかった。 それが生きたのであったから、・・・ 宮本百合子 「母」
・・・勇気、仁恵、礼譲、真誠、忠義、克己、これすべてこの執着の現象である。ただ末世に至って真の精神を忘れ形式に拘泥して卑しむべき武士道を作った。吾人は豪快なる英雄信玄を愛し謙信を好む。白馬の連嶺は謙信の胸に雄荘を養い八つが岳、富士の霊容は信玄の胸・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫