・・・俺あ党員じゃねえんだからね。正直に、手前の背骨を痛くして耕してた百姓から牛までとっちまって、日傭いになり下がらせる社会主義ってのは分らねえんだ」 集団農場組織に対しては都会の労働者の間にさえそういう無理解が一部のこされた。当時ソヴェト同・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 薄い唇を曲げ、「マルクス主義作家ということは窮極において党員作家ということだよ」「――私は、字のとおりマルクス主義作家と云っているのです」 中川は暫く沈黙していたが、前歯の間に煙草を銜え、煙をよけるように眼を細めて両手でケ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・共産党員。一九三二年の文化団体に対する弾圧当時、駒込署に検挙され、拷問のビンタのために中耳炎を起し危篤におちいった。のち、地下活動中過労のため結核になって中野療養所で死去した。百合子の「小祝の一家」壺井栄「廊下」等は今野大力の一家の生活から・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・社会主義的リアリズムは、労働者階級の勝利と社会主義社会への展望にたっているから、当然労働者階級の文学の創作方法であり、党員作家の創作の方法でありうる。けれども、たとえばスタインベックのダイナミックな手法が、彼の旅行記の中でソヴェト社会の建設・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 監督の、おだやかな三十四五の婦人党員が説明した。 ――御承知の通り我々のソヴェト文化はまだ極めて若いんですし、我々の参考とすべき経験というものが、先にない。すべて新しい。これは大変よいことだが、困難もあるんです。ここの第一の仕事は・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・「小林は共産党員じゃないか、人を馬鹿にするな!」「そうかもしれないが、それより前に、小林多喜二は、立派な文学者ですよ」「理屈なんかきいちゃいられない。サア、行くんだ」 そして、杉並署へついて、留置場へ入れられかけた。留置場の・・・ 宮本百合子 「今日の生命」
・・・左右、うしろ側の椅子に並んでるのも八割は党員らしい女だ。テーブルの端っこで速記してるコムソモールカがある。レーニンの石膏像。赤いプラカートは二階バルコンの手すりからも張りまわされている。正面には燃えるようなプラカート「第十回世界無産婦人デー・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・あの投書は文学運動全体にもかかわりをもっているから、病気のために少しおくれたがこの際、一党員作家として、「宮本さんの話」はきいているうちはわかるが結局無内容で、小説は評判ほどよまれていない、むずかしい、わからないとされているあの投書について・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・ いわゆる肉体小説、風俗小説の作者から、共産党員である作家・批評家までを包括して持たれる懇談会は、ただそれらの各種の人たちが、もちこして来ているめいめいの型のままで、一堂によりあつまったというだけでは、烏合であろう。そこから去ってしまえ・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ところで彼の政党は私利をのみ目ざす人間の集団であって、自党の利益とは結局党員各自の私利である。彼らはこの集団の力によって政権を握り、その権力によって各自の私利をはかろうとする。しかし政治はかくのごときものであってはならない。明治大帝の詔にい・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫