・・・同じスタンダールの「パリアノ公爵夫人」という美しくもの凄いロマンスは十六世紀のイタリヤ法王領内で起った悲劇であった。これらの中世のおそろしい情熱の物語、情熱の悲劇は、当時絶対の父権――天主・父・夫の権力のもとに神に従うと同じように従わなけれ・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・彼女はバルザックをカストリィ公爵夫人のサロンに紹介し、そこに集るド・ミュッセやサント・ブウヴなど当時の著名な文学者に近づけるための努力をした。十数年後ハンスカ夫人に宛てた手紙の中でバルザックが当時の優しい回想に溺れながら述べているように、困・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・たとえばトルストイが『アンナ・カレーニナ』を書き、『戦争と平和』の中でナターシャとかアンドレー公夫人とか、それから公爵令嬢マリアなどを、あんなにいきいき書けたことはすでに知れわたっていることだし、ロマン・ローランは『ジャン・クリストフ』の中・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・の中に、アンドレー老公爵と息子アンドレー、公女マリアとの関係等にもきびしく描かれている。ゴーリキイが「幼年時代」で母を書いている書きぶりは、五つで、もうあんまり母にかまわれなくなっている子供が、その母としてもその子としても避け難い力で、騒が・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・おさない早熟なマリアは、同じニイスにいて、往来で一二度ばかり見うけたイギリスの公爵Hに熱中なのである。「私は慎しい少女だから、自分の夫になる人より外の男には決して接吻しない。私は十二から十四まで位の少女には誰もいえないようなある事を誇と・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・ スタンダール パリアノ公爵夫人○アンポンといろんなところでねるの楽しいねえ。 宮本百合子 「無題(十三)」
・・・そして三角州の突端、騎馬のウェリントン公爵像は背後に英蘭銀行を、右手に株式取引所の厖大な建物を護り、巡査部長のように雑踏を上から睥睨している。 山の手のここは終点である。英国のあらゆる国家的、個人的美徳、老獪、権謀がこの煤けた八本の大柱・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・の中のアンドレイ老公が女の愚劣さを制するためにと公爵令嬢マリアに数学をやらせている描写がある。同じような配慮から、その年齢と代数とが組み合わされているのであったら、教えかたで、面白さのかんどころの掴みかたを先ずわからせて行かなければ、なかな・・・ 宮本百合子 「私の科学知識」
「デカブリストの妻」ネクラーソフ作谷耕平訳 新星社 最近深い感銘をもってよみました。特に公爵夫人ヴォルコーンスカヤをよんで、途中で巻をおくことが出来ませんでした。日本の詩人たちは詩のこのような力についてどんな感想をもたれ・・・ 宮本百合子 「私は何を読むか」
・・・それからクロポトキンだが、あれは Smolensk 公爵の息子に生れて、小さい時は宮中で舎人を勤めていた。それからカザアキ騎兵の士官になってシベリアへ遣られて、五年間在勤していて、満州まで廻って見た。その頃種々な人に接触した結果、無政府主義・・・ 森鴎外 「食堂」
出典:青空文庫