・・・しかしコリントゲームの方には公算的統計的の要素が入り込む。前者では因果の連鎖が一筋の糸でつづいているが、後者では因果の中間に蓋然の霧がかかっている。それで、前者では練習さえ積めばかなりの程度までは思いのままにあらゆる有様を再現することが出来・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
・・・偶然とするとかなり公算の少ない場合の一致である。ロシアの serditi もやはりいくらか似ているのである。苛立つが irritate(L.irritare) に似ていることは明白である。「あらぶる神」の「アラブル」がLに rabere・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・とか「公算」とかいう言葉が科学者の脳裡に浮ぶべし。ここに吾人は科学と形而上学との間の際どき境界線に逢着すべし。熱力学にエントロピーの観念の導入され、またエントロピーと公算との結合を見るに至りし消息もまたここに至って自ずから首肯さるべし。・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・ボルツマンがこのような混乱系の内部の排置の公算をエントロピーと結びつけたのは非常な卓見で物理学史上の大偉業であった。プランクはさらにこれを無限な光束の集団に拡張して有名な輻射の方則を得たのは第二の進歩であった。すなわち系の複雑さが完全に複雑・・・ 寺田寅彦 「時の観念とエントロピーならびにプロバビリティ」
出典:青空文庫