・・・向うに持っている兵器や、兵士の性質を観察した。そして、次の襲撃方法の参考とした。 中隊長は、それをチャンと知っていた。しかし、パルチザンと百姓とは、同じ服装をしていれば、見分けがつかなかった。「逃げて行くパルチザンなんど、面倒くさい・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・ 彼は、二個の兵器、二人分の被服を失った理由書をかゝねばならぬことを考えていた。 黒島伝治 「雪のシベリア」
・・・ わたくしは近年市街と化した多摩川沿岸、また荒川沿岸の光景から推察して、江戸川東岸の郊外も、大方樹木は乱伐せられ、草は踏みにじられ、田や畠も兵器の製造場になったものとばかり思込んでいたのであるが、来て見ると、まだそれほどには荒らされてい・・・ 永井荷風 「葛飾土産」
・・・ こんにちファシズムに反対し、世界平和を求め、原子兵器使用の惨虐に抗議している文学者は、その数において、科学者よりも少いとは考えられない。これらの文学者は、それぞれ日本と世界平和とすべての民族の独立のためのアッピールに署名しているし、ふ・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・それは最新化学兵器についてのニュースだった。おそろしい化学力をもつその兵器の効果は、すべての人類をたちまち醜い不具にして、死滅させる威力をそなえているものであると説明されている。それを公表しているのはイギリスの学者であった。 わたしはそ・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・現代の科学兵器で銃後というものはありません。この小さい海に囲まれた人口の多い日本が、万一超威力の近代戦にまき込まれたとしたら、どこによわい女、子供の安全な場所があるでしょう。 講和は私たちの生命の問題です。〔一九五〇年一月〕・・・ 宮本百合子 「講和問題について」
・・・こんにち世界で十数億の人民が平和と原子兵器禁止のために発言している。その過半数は婦人であり、第二次大戦の犠牲者たちである。ある人によれば、これらの婦人たちの性のクレイムが彼女たちの熾烈な平和への要求となっていると説明されるのかもしれないが、・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・どこでいつ行われようと無慙、野蛮でしかありようない現代のおそろしい兵器による戦争そのものがとりのぞかれようとしないならば、それにつづく事態ばかりをせめることは、歴史の発展のない、民族的自虐でさえある。歴史の現実にたいしてはっきりと目を開いて・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・ヒロシマ、ナガサキの経験を持つ日本の人々は何一つ罪ない人民をみな殺しにした原子兵器が世界のどこでもまたと使用されることがないようにストックホルムのアッピールへは数百万の人々が署名した。五億を越した署名の数のうち資本主義の国としては世界第三位・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・原子兵器を禁止し、それを最初に使用した権力を、人類に対する戦犯とすべきであるというストックホルムの平和大会アッピールは最近、益々そのアッピールの切実さが証明されつつある。日本でさえ六百万に近い署名をあつめた。そして、資本主義国としては、第三・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
出典:青空文庫