・・・は談林の病処を衝いた痛快極まる冷罵であった。 緑雨が初めて私の下宿を尋ねて来たのはその年の初冬であった。当時は緑雨というよりは正直正太夫であった。私の頭に深く印象しているは「小説八宗」であって、驚くべき奇才であるとは認めていたが、正直正・・・ 内田魯庵 「斎藤緑雨」
・・・文学を職業たらしむるだけの報償を文人に与えずして三文文学だのチープ・リテレチュアだのと冷罵するのみを能事としていて如何して大文学の発現が望まれよう。文学として立派に職業たらしむるだけの報酬を文人に与え衣食に安心して其道に専らなるを得せしめ、・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・ただそれがQの冷罵とペルゴレシの音楽とのすぐ後に出くわしたばかりに、偶然自分の子供らしいイーゴチズムに迎合したのかもしれない。 しかし私が彼の帰って行く後姿を見た時に突然閃いた感傷的な心持の中には、後から考えるとかなり色々なものが含まれ・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
出典:青空文庫