・・・私はあなたがたが自由にあらん事を切望するものであります。同時にあなたがたが義務というものを納得せられん事を願ってやまないのであります。こういう意味において、私は個人主義だと公言して憚らないつもりです。 この個人主義という意味に誤解があっ・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・ 人生を愛し、熱心にそこを生きて行こうとするほどの者は、誰しもこの社会の人間関係のより豊富さ、より暢やかさ、より豊饒な発育性を切望しているのが本心と思う。そういうものとして、よりよい友情の花を同性の間にも異性の間にも期待するのは自然の心・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・そんな愚かな偏見に煩わされない若者たちが、自然と人間との現実をはっきり把握して愛する大人として現れることを切望しているだろう。子供のためにコフマンがたくさん執筆している心持、この「科学の学校」もそういうものの一つとして書かれている心持、それ・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・出発のはじめから、保守の重いかげとたたかいつつある日本民主化の途上で自分たちの血と涙とをとおして平和を要望し、そのための世界的協力を切望している日本の婦人大衆の誠意をここに披瀝いたします。日本の目ざめた婦人大衆は、自分たちの真心からのよびか・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・生かしてかえしたいと切望します 実に それを願います。 ウィスキーは内国産でも現在は薬用に足りるだけ純質なのが少くて、散々人手を経て一ビン買い小売りをしないというので大枚を投じ、うちにあると、無駄にのむ奴がいるから紀さんにあずけてありま・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・安眠なさるよう切望いたします。 九月十三日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より〕 今日の午後手紙を書いて、夜テーブルの横を見たら一枚私の字の書いてある紙がおっこちている、何だろうと思って見ると、手紙の中の一枚が何のはずみか・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 私は、こういう境遇にいる一人の母である作者が、永い将来の努力によって、次第に子供のための文学として、質量ともに逞しい生産をされることを切望する。その期待につれ、「村の月夜」で、私に印象された一つの疑問に触れたい。それは、この作者が、「・・・ 宮本百合子 「子供のために書く母たち」
・・・よりよく生きたいという切望は、特別女の心の底深く常に湧き立っている熱い泉である。よしやその泉の上に岩のおもしがおかれて人目からその清冽な姿がかくされていようとも、また、小ざかしく虚無を真似て自分からその泉の小さい燦きに目をそむけていようとも・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・と民主的社会の建設のために誠実な努力をつづけている世界のすべての人がMRAの本体を見きわめているこんにち、片山哲氏が大財閥の三井一門とコーでもてなされて「MRAの機動部隊を日本に派遣されたい」と切望しているのは、チルチル、ミチルの旅にしては・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・著者が益々、文芸批評の本来性として在る極々の要因を、情熱の源泉として身につけて、細密にして柔軟、逞しい成長をとげてくれることを切望するのは、作家としても決して私一人ではなかろうと思っている。〔一九四〇年三月〕・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
出典:青空文庫