・・・もっと自由な立場で、極く初等的な万人むきの解析概論の出ることを、切に、希望している次第であります。」めちゃめちゃである。これで末弟の物語は、終ったのである。 座が少し白けたほどである。どうにも、話の、つぎほが無かった。皆、まじめになって・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・普通の初等物理学教科書などには弦が独立した振動体であるようなことになっているが、あれも厳密に言えば弦も楽器全体も弓も演奏者の手もおよそ引っくるめた一つの系統として考えるほうがほんとうだと自分には思われる。そうして音の振動数は主として弦で決定・・・ 寺田寅彦 「「手首」の問題」
・・・には地球儀がおいてありましたしうしろのガラス戸棚には鶏の骨格やそれからいろいろのわなの標本、剥製の狼や、さまざまの鉄砲の上手に泥でこしらえた模型、猟師のかぶるみの帽子、鳥打帽から何から何まですべて狐の初等教育に必要なくらいのものはみんな備え・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・ トポーロフは、ソヴェトの初等教育者というものはただ子供相手だけで納っているべきではないと考えるようになった。特に農村では大衆の文化初等教育が、広汎に要求されている。 大衆の初等教育というのは、文盲打破にはじまって、彼等を楽しませな・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・或るところは無料で、或るところは親の収入に準じた実費で七歳までの子供を保護し、食事、沐浴、初等の社会的訓練を与えてくれるのである。乳児のある母には三時間毎に授乳時間を与えられる。朝子供をつれて出勤し、退け時まで、女医と保姆の手もとにある子に・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・第一、初等中学三年という新しくふえた生徒のために学校が足りない、教師がない。教科書さえそろわない。しかも一応六年を終った年ごろで親の役に立つようになった子供は買出しの手つだいにも行ったりして困難な日々のやりくりにまきこまれ時間がない。戦災者・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・美男の良人につかまって数番の初等トウダンスと両脚を床の上で一直線に展くことをおそわった時 ターニャ・イワノヴナは自分の姙娠したことを知った。踊りての良人は不機嫌に「僕あ赤坊なんぞいらないよ」と云った。ターニャ・イワノヴナは 人工流産・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ お行儀を教えたり、根気のいる初等学科を教えたりすることは、皆、児童心理を専攻した家庭教師にまかされています。ロザリーと子供は、互から愉快ばかりを感じ合うものとして生活したのです。 ところが、長男が小学に入る頃から、先ず良人のハリが・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
出典:青空文庫