・・・元より羊は草にひとしく、海ほおずきは蛙と同じサ、動植物無区別論に極ッてるよ。さてそれから螺旋でこの生物を論ずると死生の大法が分るから、いよいよ大発明の大哲学サ、しッかりしてきかないと分らないよ。一体全体何んでもドンゾコまで分ッてる世・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・ これらの小片は動植物界のものばかりでなく鉱物界からのものもあった。斜めに日光にすかして見ると、雲母の小片が銀色の鱗のようにきらきら光っていた。 だんだん見て行くうちにこの沢山な物のかけらの歴史がかなりに面白いもののように思われて来・・・ 寺田寅彦 「浅草紙」
・・・北海道では、今でもまだ人間と動植物が生存競争をやっていて、勝負がまだ付いていないという事は札幌市内の外郭を廻っても分る。天孫民族が渡って来た頃の本土のさま、また朝鮮の一民族が移って来た頃の武蔵野のさまを想像する参考になりそうである。 札・・・ 寺田寅彦 「札幌まで」
・・・ この動植物の新世代の活動している舞台は、また人間の新世代に対しても無尽蔵な驚異と歓喜の材料を提供した。子供らはよくこれらの小さな虫をつかまえて白粉のあきびんへ入れたりした。なんのためにそんな事をして小さな生物を苦しめるかというような事・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・を焼くに至った変化につれて、木村項の周囲にある暗黒面は依然として、木村項の知られざる前と同じように人からその存在を忘れられるならば、日本の科学は木村博士一人の科学で、他の物理学者、数学者、化学者、乃至動植物学者に至っては、単位をすら充たす事・・・ 夏目漱石 「学者と名誉」
・・・ 地殻の物語は、そこに在る火山、地震、地球の地殻に埋蔵されてある太古の動植物の遺物、その変質したものとしての石炭、石油その他が人間生活にもたらす深刻な影響とともに、近代社会にとって豊富なテーマを含蓄している。岩波書店から出ている「防災科・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・公園の樹の梢へつるす鳥の巣箱を小学校の子供は手工でこしらえる仕度をし、中央児童図書館では、一つの本棚が五ヵ年計画、集団農場、国営農場、その他一般農作と春の動植物についての本でおきかえられた。 ――これが我々に一番骨の折れる、大切な仕事な・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ところで日常身辺の事実が示しているのは単に物理学的現象のみではなく、化学的・生理学的・動植物学的等の諸現象の複雑な絡み合いである。 寺田さんはそういう現象のうちにも常に閑却された重大な問題を見出していった。が更にいっそう具体的な日常の現・・・ 和辻哲郎 「寺田寅彦」
出典:青空文庫