・・・、日清戦争に出征して、屡々勲功を顕したる勇士なれど、凱旋後とかく素行修らず、酒と女とに身を持崩していたが、去る――日、某酒楼にて飲み仲間の誰彼と口論し、遂に掴み合いの喧嘩となりたる末、頸部に重傷を負い即刻絶命したり。ことに不思議なるは同人の・・・ 芥川竜之介 「首が落ちた話」
・・・とし、また相当の条件を具えた書面が幾通もあるときは、第一着の願書を採用するという都合らしく、よっては今夜早速に、それらの相談を極めておき、いよいよ今度の閣令が官報紙上に見えた日に、それを待ち受けていて即刻に書面を出すことにしたならば、必ず旗・・・ 川上眉山 「書記官」
・・・すると、直ぐ家へやって来てこんなに大衆的にやられている時に、遺族のものたちをバラ/\にして置いては悪いと云うので、即刻何処かの家を借りて、皆が集まり、お茶でも飲みながらお互いに元気をつけ合ったり、親密な気持を取り交わしたり、これからの連絡や・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・本艦は即刻帰隊する。おまえは先に帰ってよろしい。」「承知いたしました。」兵曹長は飛んで行きます。「さあ、泣くな。あした、も一度列の中で会えるだろう。 丈夫でいるんだぞ、おい、お前ももう点呼だろう、すぐ帰らなくてはいかん。手を出せ・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・ これらの仕事は、即刻各支部によって活溌に着手されなければならない。三月八日の国際婦人デー一日だけを目標とせず、この歴史的な一九三二年の国際婦人デーを記念として、われわれの決定的勝利の日まで、高まり高まり行く階級的文化闘争の積極的拡大の・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・「即刻この公訴をとり消して頂きたい。その点について申しあげたい。私は私を育ててくれた両親、かずかずの恩師、諸先生たちに正直であれと教えられてきた。そして私もそのように生きてきた。真実を愛し、正義を愛して生きてきました。ところが八月一日無実の・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・『文新』『働く婦人』等への投書家、読者、通信員へのソシキ的働きかけを忘れることなく、しかも最も直接的に、即刻なされねばならない。サークル活動をあくまでも主として。だが私達のサークル活動が、工場・農村のメーデー行進へ性急にひきずり込むため・・・ 宮本百合子 「メーデーに備えろ」
・・・亡人たちが遺族扶助料をもらいながら再婚し、しかも扶助料をとりあげられぬため、内縁関係にしているのがおびただしい数にのぼるので、東京府の恩給掛はこの際徹底的に調べて、内縁でも再婚している未亡人の扶助料は即刻とりあげると声明しているのである。・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫