・・・を映画化したものだそうである。原著を読んでいないからそれとの交渉はわからない。しかし普通のアメリカの小説映画とは著しくちがった特徴のあることだけはよくわかる。話の筋も場面も実に尋常普通の市井の出来事で、もっとも瘋癲病院の中で酒精中毒の患者の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ 十五 乙女心三人姉妹 川端康成の原著は読んだことはないが、この映画の話の筋はきわめて単純なもので、ちょっとした刃傷事件もあるが、そういう部分はむしろはなはだ不出来でありまた話の結末もいっこう収まりがついていない・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・面白いから通読してみる気になって第一頁から順々に読んで行った。原著の方は知らないのであるから誤訳があろうがあるまいが、そんなことは分かるはずもなし、またいくらちがっていてもそんなことは構わない。ただいかにも面白いのでうかうかと二、三十章を一・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ しかし、これはずいぶん心細い実験だと思われる。原著を読まないで引用書を通して読んだのであるからあまり強いことは言われないが、これだけの事実から、鷙鳥類の嗅覚の弱いことを推論するのははなはだ非科学的であろうと思われるし、ましてや、とんび・・・ 寺田寅彦 「とんびと油揚」
・・・まして材をその一局部に取って纏ったものを書こうとすると到底万事原著による訳には行かぬ。従ってこの篇の如きも作者の随意に事実を前後したり、場合を創造したり、性格を書き直したりしてかなり小説に近いものに改めてしもうた。主意はこんな事が面白いから・・・ 夏目漱石 「薤露行」
出典:青空文庫