月 日。 郵便受箱に、生きている蛇を投げ入れていった人がある。憤怒。日に二十度、わが家の郵便受箱を覗き込む売れない作家を、嘲っている人の為せる仕業にちがいない。気色あしくなり、終日、臥床。 月 日。 苦悩を・・・ 太宰治 「悶悶日記」
四五日前のある夜十時頃、机に向っていると外でうちの名を呼ぶ男の声がした。速達だろうと思った。郵便受箱へ入れておいて下さいというつもりで高窓をあけたら、タオル寝間着の若い男のひとが立っていて、妙にひそめた声と左右に目を配った・・・ 宮本百合子 「このごろの人気」
・・・最前列の女が席を立ってそれを舞台の上、演壇の下に出されてる投書受箱へ入れてきた。 ――タワーリシチ! 今夜盛大な第十回世界無産婦人デーの夕を持つことは実に愉快であります。何々区ソヴェトの心からの歓びを諸君に伝える為私は代表としてここに送・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
出典:青空文庫