-
・・・それから、『五縁』、『十夢』、大きな史劇の計画なぞを立てていたのも、彼処だ。この国府津時代に書きつけた、ノオト・ブックを後で見たが、自分はもうどうにもこうにも仕様が無くなったから、一切の義務なんかというものを棄てて了って、西行のような生活で・・・
島崎藤村
「北村透谷の短き一生」
-
・・・西洋史で教わったローマ法王グレゴリー〔七〕世を主人公にした史劇みたいなものを書いた。わが幼稚なる衒学時代の開始、日本の文壇は人道主義が盛だった。一九一六年女学校五年、祖母の棲んでいる福島県下の田舎へ小さい時から毎年行って・・・
宮本百合子
「年譜」