・・・勇吉夫婦は、ところが、名うての豪の者ではないか! 勘助は、馬さんと大手おけに水をくんでゆくと、いきなり、ざぶりと、燃える障子にぶちまけた。火はあらまし消え、くすぶり、その辺はみじめな有様だ。「さあ、もうよさっせ、ええ物笑いだ」 ・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
人と話をする度に「内のばっぱはない」と云って女房自慢をするので村の名うてのごん平じいの所に勇ましいようでおくびょうな可愛いいようでにくらしい一匹の雄が居た。其ののかんしゃく持ちなのは村中のひょうばんものである。きのうは隣の・・・ 宮本百合子 「三年前」
・・・踊り達者で名うてのオリガが、重い防寒靴をはいているとは信じられない身軽さで、つと輪の真中にでた。機械工体育部水泳選手のドミトリーが、今度は対手だ。本ものだ! 本もののソヴェトのプロレタリアの祝の踊りである。 ニーナは、ほれぼれするような・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の三月八日」
出典:青空文庫