・・・移民した人々に対する英国の徴税とその君主支配に反対して独立戦争をおこして、勝利した。人類の理想、人道主義世界の擁護、平和の精神はアメリカ伝統の精神である。それは、日本が侵略開始した満州事変の時から南方侵略までの十数年間、アメリカが日本の侵略・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・そして、その感情生活も性格から来る不羈奔放さとともに、専制的な君主らしく一人よがりで気ままであったこと、伝説化されている淀君のような存在もあり、一方には千利休の娘に対する醜聞なども伝えられている。 当時の社会では、征服した者が権力を以て・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・それには君主が宗教上の、しっかりした基礎を持っていなくてはならない。その基礎が新教神学に置いてある。その新教神学を現に代表している学者はハルナックである。そう云う意味のある地位に置かれたハルナックが、少しでも政治の都合の好いように、神学上の・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・それが君主を目差すとか、大統領を目差すとかいうことになるのは、主義を広告する効果が大きいからだと云うのだ。」「焼けな話だね」と、山田が云った。 犬塚は笑って、「どうせ色々な原因から焼けになった連中が這入るのだから、無政府主義は焼けの・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・こうして森厳な伝統の娘、ハプスブルグのルイザを妻としたコルシカ島の平民ナポレオンは、一度ヨーロッパ最高の君主となって納まると、今まで彼の幸福を支えて来た彼自身の恵まれた英気は、俄然として虚栄心に変って来た。このときから、彼のさしもの天賦の幸・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・同じく人としてこの世に実在するならば吾人の霊的出発点は一つである、神の前に同じ権威を有する精霊である。君主と高ぶり奴隷と卑しめらるるは習慣の覊絆に縛されて一つは薔薇の前に据えられ他は荊棘の中に棄てられたにほかならぬ、吾人相互の尊卑はただ内的・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫